第11回ウディコン感想(5)
~ウディコンに参加する~
19/08/29
7月の私に、ウディコンに出ないという選択肢は思い浮かばなかった。
敵グラフィックを依頼した四名の製作者様は、
それはもう本当に素晴らしい絵を書いてくださっていた。
それを配置するだけで、世界観がバーッと広がるのを感じた。
この絵を無駄にしたくない。
脈のない片思いをしてしまったときのような状態だ。
一つの思考にとらわれて、冷静な判断などできない。
根拠のまったくない希望的観測だけで動いていた。
―あと二週間あれば、あと一週間あれば、あと3日あれば、なんとかなる―
だが、制作が進めば進むほど、これまで自覚していなかった作業が見えてくる。
タスクが減らない。むしろ増えていく。
会社の有給は使いまくっていた。これ以上休日をとることはできない。
こういう時の時間の流れは早い。
ウディコンの締切は着実に迫ってくる。
気がつけば作品募集期間に入っていた。
数日が過ぎ、続々と応募作品が増えてゆく。
締切までもう数十時間。
私はあわててワイハハエンディングだけを実装し、
もはや期間中に修正もやむなし、という状況になっていた。
急ごしらえでReadmeファイルを作り、ウディタでVer 1.00を作成。
アップロード用にフォルダをZip化したとき、ラズがなにか言いかけた気がした。
私は見ないフリをした。
こうして、『八人のアダム外伝』は参加締め切り日の23時過ぎに、
第11回ウディコンに参加を受理された。
作品は【64】というエントリー番号をいただいた。
参加できたときは心底ホッとした。
本作ではウディタの基本システムは最小限しか使っていない。
自分でチクチクと積み上げたブサイクなプログラムでゲームが動いている。
自分を少しくらいほめてもいいのではないかと思ったりもした。
(※ここで別の議題。自分で組んだシステムだから偉いということは全くない。
むしろシステム作りは時間がやたらかかるので、基本システムや公開されているコモンシステムをうまく利用して、演出や完成度を高めることに時間を使ったほうがいいと思います。特に、初心者の方は・・・)
が。
現実には、ロクにデバッグもしないままアップした作品はバグだらけであり、
演出が最序盤しかないクソみたいなゲームである。
そんなのFFであれドラクエであれユーザーは怒るだろう。
この状態でダウンロードする人にはさすがに申し訳ないなと思い、
現Verはよろしい出来ではなく、更新準備中である旨を、
ダウンロードサイトやBBSに記載した。
しかし、ウディコンプレイヤーは一種の戦闘民族であった。
そんなことおかまいなしに作品は日々パラパラとDLされてゆく。
結果、次のVer1.03をアップするまでの二週間ほどの間に、ゲームは約200DLされていた。
そして怖いのは、作者に届くコメントが皆無であることだった。
この200DL(数字上のことなので実際はもっと少ないだろうけれど)の人たちは、
このゲームをプレイして、今何を思っているのだろう・・・?
10ヶ月前の自分が夢想した、
「すげーゲームが現れた!!」「こりゃヤバイ!」というような評判はそこにはなかった。
エゴサをすると、ぽつぽつ「未完成」という文字が目に入った。
「オープニングはいい」という意見もあった気がする。あとはおおむね静かだった。
その時の私は、愚かにも二週間あれば一通りの演出を実装できるのでは、と思っていたが、
全体攻撃のシステム作り、工場長、市場の店長との会話、毎月のラズの記憶演出などを実装したところで、宣言していたアップデートの日は来ていた。
全然できとらん。
でも、全体攻撃はなかなか気持ちいいものになったし、工場長や店長の会話から世界観を伝えることができたし、ラズの来歴も最低限伝わるようになったはずだ。
もしかすると褒めてくれる人もいるのではないか。
淡い期待もあったが、やはり反応はそこまででもなかった。
このあたりで私はようやっと気が付き始めた。
私はやらかした。
この作品は期間中に完成しない。
いや、それどころか、いろんなものを台無しにしているのでは・・・。
そんな中でも、まれにコメントやSNS上でのつぶやき、そして作品BBSへの書き込みをしてくれる人がいた。
そのときの私にとってこれらの意見は、暗い海の灯台に等しかった。
正直言うと、ウディコン期間中、自分の感覚はマヒしていた。
なんのために、どういうことを形にするために、
このゲームを作っていたのかわからなくなっていた。
だが、これら数少ない意見を見ると、
せっかくプレイしてくれたこの人たちを少しでも楽しませたい、
とわずかでも思うようになってきていた。
カタルシスに必要なのはエンディングだ。
そこにつながるイベントを作ろう。
BBSに詳細なバグ報告をしてくれた人がいるので(どなたか存じませぬが本当にありがとうございました)、それを潰す。
その上でゲームとして成り立つための最低限の要素を入れる。
これは依頼がきちんと実行できるとか、敵が少しずつ変わるとか、このゲームをするうえでもっとも基本的なシステムだ。
そんなものですら整備できていなかった。
ラズがブラックガーディスとたたかうイベント、
そして、エンディング1のみを実装する。
演出はというと、単調なセリフが続くものばかりになってしまった。
だがもう仕方ない。
作内における結びまではなんとかかたちにしよう・・・。
こうしてエンディングまでを一応実装したVer1.04をアップできたのが、
ウディコン残り3日時点。
そこからバグをいくつか修正し、お金持ちでゲームをスタートできるクイズや、11月まで移動できる処理を設置したVer1.05をアップできたのが、ウディコン残り2日のことだった。